るを得ないと予想されるように、人類の海とのかかわりは、極めて多面的で広範な分野に及び、かつ、深いものである。
我が国と海
四面を海に囲まれた我が国は、例えば国土面積は米国の四パーセントに過ぎないのに、経済水域は米国の半分にもなるように、地勢的に海の恩恵を多く受けるばかりでない。海洋国家として、水産品の調達はもとより、日常生活に欠くことのできない物資のほとんどを海上輪送によって確保している。

 

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我が国の輸入量は、年間約七億三千万トン。うち石油、液化ガスなどが約三億二千万トン。穀物三千百万トン。鉄鉱石、石炭がそれぞれ一億二千万ノ。木材、パルプ等が三千九百万トンなどである。輸出量は、一億トン弱であり、加工貿易を基本に成り立っている国の経済も、安価大量の輸送手段である海運によって支えられている。
四囲の海は、古来、外敵を防いでくれたため、世界史的にもまれな平和な国を可能とし、他方で海を通路として、漢字も仏教も大陸技術も伝来し、独自の文化が育てられてきた。雨の多い四季のはっきりした温暖な気候も、四面海の国だからである。潮干狩り、海水浴、マリンレジャーなど生活の憩いの場や青く美しい景色を提供してくれるのも海である。
海によって生きてきたわが国にとって、海洋環境の保全と海洋の健全で多面的な開発・利用は、一昨年秋に発効した海洋法条約と相まって、今後ますます重要な課題になると思われる。

 

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このように、実に多くの恵みを与えてくれる海について、陸上で生活する私たちは、ともすれば忘れがちであるが、国民一人一人が海とのかかわりの広さや深さを見つめ直し、海の恩恵に感謝し、海を大切にする心を育てていくことが必要である。新たな祝日の制定は、そのために行われたものである。
祝日「海の日」
国民の祝日に関する法律(祝日法)は、第一条で「日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを『国民の祝日』と名づける」と規定しており、「海の日」はこれにふさわしいとして、昨年二月末に祝日法改正が行われ、十四番目の国民の祝日とされた。
新しく制定された「海の日」は、祝日法では「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」という意義をもつ日とされている。最も海の恩恵を受けている国の一つである我が国が、世界に先駆けて祝日「海の日」を制定したことは、極めて自然で意義深いことであろう。江戸時代の鎖国によって海から遠ざけられてきた日本人の心が「海の日」の制定を機会に、再び海洋民族の本質に戻って海に向けられるようになることが期待されるところである。
七月二十日
「海の日」は、七月二十日とされた。この日は、昭和十六年、逓信大臣村田省蔵が提唱し、次官会議によって「海の記念日」とされ、以後五十数年間にわたって、海事関係者を中心に祝われてきた日である。海に親しみ易い夏の始まりの時期であり、六月から八月にかけては祝日が一つもないこともあって、この日が「海の日」には最も適切とされた。公立学校の大半においては、七月二十一日から夏

 

 

 

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